バンコクでの薬のお話をひとつ。
私は3-4年前、東京に居たころから乾燥肌気味で、足のくるぶし辺りがかゆくて困っていた。どうしても時々掻いてしまうので、だんだん悪化して肌の色が少々黒くなって荒れてきて、軽いアトビー跡のようになっていた。日本では病院にも2-3度行ったのだが、石鹸は使わず、しかし清潔に保ち、かゆくなったら我慢してこの薬を塗っておきなさい、と言われ、言うとおりにしていたのだが一向に治らず、バンコクまで持ってきてしまっていた。こちらで気候が変わると良くなるかと期待していたが、相変わらずの状態で暑くて汗を掻くとまた痒くなり、もうあきらめていた。
ある日、夕食の帰りに結構痒くなったところで、レストランの隣のごく普通の薬屋さんを通ったので、何か塗り薬を、とお店の若いおねーさんに、「あのー、ドライスキン、ヤー(薬のこと)ありますか」と軽く尋ねてみた。
「アー、ドライスキンネ。コレナンカドーデスカー。」といたってテキトーに薬を出され、買って帰った。多分200円くらいだったと思う。
で、何の期待もせず、家に帰って塗って見た。お、けっこう気持ちよいぞ。匂いもなんか薬らしいいい感じ、とそれから2-3日愛用していた。すると、あれれ、かゆみがおさまってるぞ。掻きたい衝動に駆られる頻度が減ってるぞ。あれれ、荒れたお肌が以前よりスムーズになってるぞ。ほんとかよ。とさらに2-3日塗り続けた。あれれれ、色が肌色に戻ってきてるぞ、掻きたい衝動頻度が激減してるぞ、えー?
そして約1週間。うぉー、何の跡形もなく健康なくるぶしになってるぞ、おいおい、かゆみがまったくなくなってるぞ!これはすげー。ちょっとしばらく塗るの止めてみようかな。ていうか、ほかに塗るとこないかな。と奇跡の乾燥ボロボロ肌治癒薬に感動していろんなところに無駄に塗って見た。さすがになんでもないところに塗ったり、ほくろに塗っても何の効果もなく、私の感激はわずか1週間で終わってしまった。その後、数ヶ月かゆみは再発していない。くるぶしのお肌の見た目もまったく人前に出しても恥ずかしくない状態を維持している。4年間苦しんでいたのに、なんとあっけないお別れだったんだろう。あのかゆみよ、もう一度。そしたらまたこの薬で退治してやるぞ。
タイにはこのように妙に効く薬が多い。ウチのカーちゃんは1ヶ月ほど前から胡散臭いダイエット食品パッケージを友人に誘われてはじめた。食事量も指示どおり減らしてはいるのだが、さほど苦しそうでもなく今4キロやせた、とかあのきつかったズボンがほらほら、とぶかぶかしたウェストの隙間に手を突っ込んで見せびらかしている。
これらの薬は効き目の凄さから想像するに日本では安全上の問題で売られていないものに違いない。長期で使用すると何かの副作用があったり、まずいこともあるのかもしれない。でもわしら夫婦はこれで幸せを得ているのだ。副作用もなにもないのだ。(今のところね)
タイには中国人が多いので中国の漢方薬をどかどかそこらじゅうで安く売っているし、薬の規制が甘いため、欧米で作られて日本では処方箋が必要な薬も、町の薬屋で売っている。わしら夫婦のように、あまり神経質に考えず売ってるものは買ってみよう的なノリの人間にとっては自己リスクではあるがこのような薬で日本の病院で4年かかっても治らなかったものを1週間で直したりできるのだ。
とはいえ、わしら夫婦も幼い子供の薬に対しては神経を使っており、病院で乱発される抗生剤などにも気をつけて最小限にしてもらっている。自分たちのドライスキンの薬やダイエット食品などに対してもまったく気にしていないわけではない。一応心配はする。では、なぜトライするかというと、注意書きがタイ語なので成分が何なのかすら、ただ読めないだけなのだ。
無知ゆえの幸せ。(終)
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