今日から、バンコクでは毎週月曜日だけ路上での屋台は営業禁止の条例が施行されるらしい。継続するかどうかわからないが、いつかなくなると言われて久しいレストラン内での禁煙の法律ももう2年も続いており、かつてほどなしくずしになる可能性は低い気がする。
屋台制限の理由は、衛生的でない、美観を損ねる、交通の邪魔、マフィアの資金源断絶、などだろうが、歩いていて掘り出し物を見つけたり、おなかがすいたときにちょっと食べる、という利用シーンを思い出すと、捨てがたくポジティブな面が多い。たしかに歩く際に邪魔ではあるのだが、本当に歩きづらくしているのはボコボコに穴の開いた歩道のブロック舗装であり、市政にはそちらを先に直して貰った方がはるかにありがたい。
朝通った道では、土日、昼間は屋台が出ないところなので、さほど変化は気にならなかったが、月曜だけこれまでとうって変わった風景になるところはカオサンだけでなくいたるところにある。屋台の側も生活が変わるだろうが、買う側の生活にも影響はでる。タイでは自炊をせず屋台で帰り際におかずを買って帰る家庭も多い。路上の台所である。当社の社内でも夕方になると家庭的なにおいのするビニール袋を手に揺らして帰る社員が残業社員の帰りたい気持ちに鼻から揺さぶりをかける。
仕事で撮影ロケにいく際、海でも山でも田舎でもオフィス街でも、撮影隊の行く先には必ず屋台のおばちゃん軍団がついてくる。さすがに手押し屋台ではなく、自動車屋台だが、1週間以上でも毎日違う料理を朝昼晩出し続けられる素材と装備を格納した、いわゆる食料補給部隊である。生存者がいる限りどこにでもついてくる。これぞユビキタス・サービスの典型である。
今回の条例は「いつでもどこでも」の屋台のユビキタス性から「いつでも」性をそぐもので、日本政府の目指すユビキタス社会の発展という視点で言えば、逆に一歩バンコクの近代化が遠のいたと言えなくもない。バンコク市が目指すべきは、屋台の消滅ではなく、屋台の衛生化、近代的屋台システムの開発促進、ではなかったろうか。
物乞いが消え、屋台が消え、バイクタクシーが消えてしまうバンコクには、交通渋滞のみ残り、庶民にとっては綺麗だが暮らしにくい街になっていくのでは、と不安になってしまうBlue Mondayであった。